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マグロのプロに訊く!マグロのアレコレ

みなさんマグロは好きですか? こんにちは、編集部シノブです。

私もマグロは大好きで、とくに、ねっとりと濃厚で旨味が凝縮した赤身に目がありません。でも、実はマグロについて知っていることって、ほんのわずか。

そこで前回に引き続き、築地の場内でマグロを扱う老舗店・大宗さんにマグロのことを教えてもらいました。マグロの種類や産地、部位など、マグロは知れば知るほどおもしろい!

 

前回の記事はこちら

マグロの競りで真の品質を見極める

 

そもそもマグロって?築地で取引されているマグロは5種類

築地にはおよそ600軒の仲卸業者(※)のお店があります。なかでも多いのがマグロを扱うお店で、築地の仲卸の3分の1にあたる200軒近くがマグロに携わっています。

※水産卸売業者:7、仲卸業者:596、売買参加者:292(平成29年4月1日現在)

 

シノブ
大宗さんでは1日にどのくらいのマグロを仕入れているんですか?

 

白田社長
日によって違いますが、だいたい20〜25本です。今日はホンマグロ、ミナミ(インド)、メバチ、キハダが1,500本くらい競り場に出ていたんじゃないかな。

 

▲競り場のマグロ

 

 

シノブ
築地に入ってくるマグロはその4種類ですか?

 

白田社長
ここはだいたい、クロマグロ、ミナミマグロ、メバチ、キハダ、ビンナガの5種類。これの生と冷凍と、養殖も入ってきます。

 

シノブ
マグロというと“黒いダイヤ”とも言われているクロマグロが、最近だと人気があるようですが。

 

白田社長
そうですね、最近はクロマグロがマグロの王様のような存在になっていますよね。日本人の思入れが強いマグロかもしれない。でも、味のいいマグロは他にもたくさんありますよ。ミナミもメバチもおいしいものは本当においしい。

マグロは産卵するためにエサをもとめて海を回遊しています。だから、同じマグロでも、時期によって味わいがちがうんですよ。

 

たとえば昨今、人気の「大間のホンマグロ」は、9〜12月が旬を迎えると言われています。これは、ちょうどこの頃に津軽海峡は3つの海流が流れこむため、良質なエサが多く、なおかつ寒くなるにつれて水温が下がるので、脂ののりが良い大型マグロが多くなるからです。

 

▲マグロの回遊

 

 

マグロは産卵のためイカやイワシなどエサになる魚を追いかけて広い海を回遊する。1年の半分はエサを求め、あとの半分は産卵のため回遊を続ける。近海のクロマグロは台湾や沖縄の海域で産卵し、若魚期の春には九州の下で二手にわかれ、黒潮にのって北上し、北海道近海でエサを食べ日本近海を回遊。12月頃から日本海や太平洋を南下しはじめる。春夏は北で、秋冬では南で、回遊ルートにあたる各地の港で水揚げされる。

 

シノブ
今ぐらいの時期だとマグロはどういう状態なんですか?

 

白田社長
冬場のように低い水温の海でエサを食べ込んだマグロとはちがって、脂ののりは軽めで赤身の色も明るく、しっとりした味わいというのかな。少し前までは、マグロのそういう季節による違いを楽しんで買ったり、食べたりっていう人が多くいましたが、最近は少なくなんたんじゃないですかね。

 

シノブ
大宗さんではどんなマグロを扱っているんですか?

 

白田社長
うちは、生マグロ、冷凍のバチ、ミナミ(インド)、クロマグロなどをやっています。

 

▲マグロについて教えてくれる白田社長

 

「クロマグロ」は世界中の海を回遊しており、日本近海はもとより世界中の海で獲れます。近海ものの生、海外から生のまま氷詰めにした空輸や冷凍物まで築地に集まってきます。なかでも冬の時期に日本の近海で獲れるものは赤身もトロも、味や香りともに最高級といわれています。

 

インド洋からオーストラリア南方で獲れる「ミナミマグロ(インドマグロ)」はクロマグロより小さめだが見た目はほぼ変わらず、味も上物はクロマグロに遜色ないほど。値段自体もクロマグロの次に高値で取引されています。日本では獲れませんが、築地には冷凍もの、空輸の生も入ってきます。

 

「バチ」と呼ばれるメバチは熱帯・温帯域に広く分布。世界の捕獲量はマグロ類のなかでキハダに次いで多く、クロマグロとミナミマグロと比べると値段も安い。生は高級で、秋口に三陸あたりでとれるものには高値がつく。身は鮮やかな赤色で、酸味が穏やかで脂の甘みや旨みも強い。

 

「キハダ」も世界中の海で獲れ、日本には夏場にやってきます。サクや刺身を見ても、赤色ではなくピンク色をしているので一目でわかるはずです。脂肪が少なく、名古屋から西の地域で好まれ、赤身は春から夏がさっぱりとして美味と言われています。

 

世界中の熱帯・温帯域に広く生息する「ビンナガ」は、昔は生ではあまり食べることはなく、ツナ缶の材料などに多く用いられていました。今では脂がのった部分の「ビントロ」の需要が高くなってきており、すしだねとして使われています。

 

マグロはかつて下魚だった!?

日本人とマグロの関係は長く、わかっているだけでも縄文時代の貝塚からマグロの骨が出土しているという事実があります。また古事記や万葉集にもマグロの記載があるほど。そのくらい古くから日本人はマグロを食べてきました。

 

白田社長
マグロは傷みやすい魚のため、あまり好まれず、長いころ「下魚」とされていたと先代から聞いたことがあります。

 

シノブ
そうなんですか? たしかに今のように交通網は発達していないから運ぶのに時間がかかったでしょうし、冷凍技術なんてない時代に、鮮度を落とさずに輸送するなんて不可能ですよね。

 

白田社長
漁港から東京に運んで刺身でなんて食べたらお腹を壊しちゃいそうですよね。

 

シノブ
それがいつ頃からマグロ人気が出るようになったんですか?

 

白田社長
江戸時代の頃に、足の早いトロはネギマ鍋にして火を通して食べたり、近海でとれたマグロを醤油漬けにして、握ったらしいです。通説では、江戸前寿司でマグロをネタに使ったのが、そのヅケが始まりだったとかね。

 

▲マグロのヅケ丼

 

 

その後も、明治や大正時代の頃まではアジやサバと同じ大衆魚と同じ位置付けで、赤身の刺身として食べられていたという説があります。トロは腐りやすいため、刺身としての需要はなく、加熱用として利用されていたようです。

トロが生で食べることができるようになったのは氷冷蔵庫が出て、保存管理ができるようになった明治時代のこと。それでも昨今のようなトロ人気はもう少しあと、戦後そして高度成長期の頃からだそう。

 

白田社長
日本人の食生活が、あっさりとした淡白なものから、濃厚な味を好むように変わって、トロの人気に火がついたのかもしれない。それと冷凍技術や輸送技術の進化で、傷みやすいマグロの鮮度を保持できるようになった。このことによって美味しいいマグロをみなさんが食べられるようになったのではないでしょうか。

 

シノブ
マグロが高級魚になったのは、わりと最近の話なんですね。

 

 

昨今のマグロ人気は、日本人の嗜好が変わったことは大きな要因なのだと思いますが、流通や漁法の進化によって、格段とおいしいマグロが食卓に上がるようになったことが大きく起因しているということは知りませんでした。身近にマグロを食べていながらまったく実感していなかったことです。とても貴重なお話をうかがうことができました。

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編集者/ライター。東京・下町生まれ。旅と町歩きとカメラが趣味。人生最後の晩餐はお寿司と決めている魚好き。